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県営・伊良原ダムは京築地区の水道料金を引き上げる
2009年7月12日
党福岡県議団 事務局長 木下紀男

大分県と接する英彦山付近を源流とし、旧犀川町から旧豊津町、行橋市と流れて、周防灘にぬける中小河川・祓川(はらいがわ)。この川の上流部に、次の3つの目的をもってつくられるのが県営・伊良原ダムです。
- 京築地区と田川地区への水道水の開発〔利水対策〕
- 京築地区での既得取水の安定化・河川環境の保全〔主に農業用水の確保〕
- 洪水調節〔治水対策〕
このダム建設に事業費で678億円、地域振興事業費(水特事業費)に約59億円を使い、これ以外にも多額の関連事業費を使います。福岡県が強行にすすめてきたダム建設が地域に何をもたらすのか、今回は京築地域への影響を考えます。
1、「京築の水道」事情
●使用量は微増傾向
表①~④は、京築地区の給水人口、水道普及率、公共下水道処理人口、実際の取水量の推移です。
地区の人口は減少していますが、給水人口、水道普及率、公共下水道処理人口ともに微増する中で、苅田町を除くすべてで実際の取水量が微増しています(苅田町は減少)。
●現状の水利権の大きさをどうみる
この微増状況が続く場合、水はどこまでまかなえるのでしょうか。
表④では、仮に、いま、もっている水利権(ダム完成前の量)通りに「水がある」とすると、現状の水利権であと何年、各自治体をまかなえるか、その試算を行っています。
この計算通りなら、ダムがなくても「行橋市で28年、豊前市で11年、みやこ町や築上町は20年以上大丈夫」ということになります(苅田町は水使用量が減少しているために、永遠に大丈夫となります)。要するに、今もっている水利権がかなりの大きさであることがわかります。
●自己水源を大事にしてきた地域
実際には、この「水利権通りに水がない」ところが悩みです。都市部以外の地域は歴史的に、地域内の河川の表流水や湖水、深井戸等からの水を大事にしてきました。京築地区でも同様で、京築の自己水源の活用率は、県下でもトップクラスです(表④)。
●現状の水利権での力の判定を
現状の水利権でどこまでまかなえるかは、たぶん誰もわかりません。その水利権で、どれだけの水が確保されるかは、その年の降雨量や農繁期か、農閑期などによります。したがって、毎年の平均的な取水量(表④)に対して、それぞれの水利権(表⑤)がもつ実際の「水」確保力を判断し、現状での水利権で十分なのか、それとも不足しているのかの判定が必要です。
だからといって、ダムのように、高いコストをかけ、環境を破壊する方法で「水を確保する」のは21世紀のあるべき姿ではありません。その方向性が問われています。
2、「ダムにたよる」水開発の見直しを
伊良原ダムができれば、水利権量(最大取水量)が京築地区全体で日量1万トン増大するのは事実ですが、このダムは地域に大きな負担をもたらします。自治体負担が地区合計で16億円4千万円にもなります(企業団は「実質負担はこの半分」といいますが、この額を一旦払うのは事実です)が、住民にも大きな負担がかぶせられます。
●責任水量の増大で、水道料金が1.6倍にもなる可能性
ダム完成後によるもっと大きな影響は、責任水量の増加による自治体負担額が急増です(表⑥)。
典型はみやこ町で、現在の受水費が約5倍になり、年間で1億7千万円近くも負担することになります。これだけの費用を町はどこからもってくるのでしょうか。
また、豊前市は、今でも県下2番目に水道料の高い市ですが、これが、さらに大幅に引き上げられる可能性が大です。
各自治体は、給水人口が伸び、下水道が普及して水使用量が増えることにより、この負担増分をまかなう計画ですが、人口や給水人口、公共下水道が前述の状態では、1・6倍にもなるダム完成後の受水費を結局、いまの住民が負担することになります。
●この負担ですむか
ダムの事業費が、当初の公表額から最終的に大きく引き上げられる例は多数です。現在、完成間近かな藤波ダムは当初の86億円が最終的には4倍近い360億円に、現在進行中の五ケ山ダムも当初850億円がいまでは1050億円に、この伊良原ダムも今回、93億年も引き上げられました。完成予定とされる2018年までに、どれだけの額に引き上げられるのか、誰も不明です。あがった分は結局、自治体と住民におしつけられます。
●「ダムによらない対策」、京築ではどうするか
行橋市などのように、実際に渇水に頻繁に遭遇しており、現状の水利権だけでは将来的に不足するところも考えられます。そのような自治体では、「ダムによらない水」の対策が必要です。その場合、京築では次のような方向が考えられます。
①自己水源の活用と開発を
ダムに代わる対案として、一番有効なのは、深井戸などの自己水源です。多くの自治体が井戸や湖水、表流水などの自己水源をもっていますが、京築水道企業団ができ、そこから契約した費用を払う中で、むしろ自己水源の使用料が減少しています。典型が豊前市で、企業団からの水の使用を優先させる中で、深井戸の計画取水量を半減させています。
水があるかどうかは慎重な探査が必要でしょうが、水に恵まれる自己水源を探すのは重要です。水が不足すると判定される場合、環境に配慮しながらも、まず豊かな自己水源を探し開発しましょう。これが一番安上がりの可能性があります。
②山国川・平成大堰の工業用水の活用を
93年に完成した山国川にある平成大堰は、184万トン(日量換算で5千トン)の工業用水をもっていますが、これがまったく使用されていません。この量は伊良原ダム分の半分にあたり、これはもったいないことです。
いま、政府も、あまった工業用水の転用による活用には積極的です。現に、大牟田市は隣りの熊本県の余った工業用水を買い取り、いま、上水道に使用しています。これを京築でもやればいいのです。大分県からも喜ばれ、受水費用も伊良原ダムより安い可能性が大です。
③北九州市営・油木ダムからの取水を増やしてもらえないか
また、京築平野の山間部の位置し、伊良原ダムのすぐ横にある北九州市営の油木ダムの水利権をもっと拡大させてもらえないかどうか、北九州市に相談することです。
3、 678億円の事業が「自治体負担24億円でできる」怪
最後になりましたが、この事業は総事業費が678億円もかかるのに、自治体負担は24億円程度ですむ」という不思議な現象があります(表⑦)。
今回は、紙数の関係で詳述できませんが、国と県による莫大な負担で、自治体負担が小さくすむようにみせ、巨大な建設事業へ自治体と住民を誘導する国と県の手法が見えてきます。
国と県の負担といっても国民の税金です。国と県の負担なら見えにくいことを利用しています。
このような手口を今後、厳しく批判することが必要です。
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