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1万5千人が入所待ちなのに特養の増床はわずか988床
福岡県高齢者保健福祉計画をどうみるか

2009年7月
日本共産党福岡県議団事務局 三浦紀彦


1、県高齢者保健福祉計画とは

●先行した医療費「適正化計画」なる医療費削減計画

自公政権による毎年社会保障費を2,200億円抑制するという方針のもとに、各都道府県は国が示した医療費削減計画に基づき、医療費適正化計画(第1期2007年~2012年度末までの5ヶ年計画)を策定しました。

福岡県では2012年度に967億円の抑制効果を生み出すという施策を打ち出していますが、その中心になるのが療養病床の縮小と転換です。

2007年4月1日現在、医療型療養病床17,258床、介護型療養病床6,844床を、2012年度末には介護型を0にして医療型療養病床を15,550床にするとしています。

その受皿としては、次に述べる第5次高齢者保健福祉計画(以降「計画」)の中で、新型の老人保健施設8,552床などに「転換する」ものとしました(表①)。



●これを受けた県の高齢者保健・福祉計画

「計画」は、1994年度を初年度として、高齢者の総合的な保健福祉サービスの整備などを目的に策定されているものですが、政府の意向をうけ様々な問題点をもってきました。今回の第5次「計画」も次のような問題点をもっています。

第1に、この「計画」は、医療費適正化計画との整合性が強調されていますが、療養病床からの「8,552床の転換」計画は医療機関まかせになっており、もし医療機関が老健施設などに転換しないとするならば、大量の介護難民が生まれることになります。

現実にも、現在までに転換した病床数は、1ケタで大半の医療機関が「今後の介護報酬などをみて決める」としており、削減された8522床が補填される保障はありません。

第2に、県の第5次計画では、介護給付費の総額では3ヶ年を通して7.5%の増を見込んでいますが、施設サービスは極力抑制し、居宅サービス、地域密着型サービスに重点が置かれています(表②)




県の直近の調査では、本県の特別養護老人ホーム入所希望者は15,000人強で、その内自宅待機者が4,000人強、内要介護度4、5の重度の要介護者が1,000人も自宅で待機しています。今回の第5次計画では、特養施設の整備計画はわずか988床で、市町村認可の小型(30床以下)の地域密着型介護老人福祉施設の計画(263床)を加えても1,251床にすぎません(表③)。



現在、高齢者を対象にしたグループホームや有料の老人ホーム等がかなり整備されていっていますが、入所者の負担は最低でも10万円以上かかります。月数万円の国民年金を受給している高齢者が入れる施設は補足的給付(所得に応じてホテルコスト代の本人負担に上限を設け、不足分は介護給付費より支給する低所得者対策)の対象となっている特別養護老人ホームと地域密着型介護老人福祉施設しかありません。その整備が何よりも求められています。


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2、05年の制度改悪で「保険あって介護なし」の事態がいまも進行している

介護保険制度が発足してから5年目にあたる2005年に介護保険法が改悪されました。

主な改悪点は、①新予防給付の導入(要支援と要介護度1を要支援1、2、要介護度1に分割、軽度の要支援1、2を新予防給付に再編)。②要介護1以下の人は原則として介護ベッドや車イスが利用できない。要支援の人は介護施設に入所できない。 ③2005年10月より施設介護やショートステイに「ホテルコスト」を導入(所得や居室環境により1万円~7万円の負担増)。④生活支援(家事サービス)は健常の同居家族などが居る場合原則として受けられず、90分以上は加算なし、要支援1は週2回程度で月24,680円まで。⑤介護予防や高齢者支援事業を老人福祉事業から介護保険事業に組み入れ、介護保険の枠内で行う。などです。

こうした改悪により、居宅介護サービスや施設介護サービスにブレーキがかかり、特養施設などの施設整備の抑制(福岡県の場合、2006年度から2008年度まで833床しか整備していない)などと相まって、介護給付費は2005年度から横ばいに転じています。

また2006年度~2008年度第3期の介護保険事業計画と比べてみても、給付実績は表④のようになっています。



上記の介護保険事業計画は、2005年の改定を受け、新予防給付や施設介護のホテルコストの導入、介護報酬の引下げなどを考慮に入れて策定したものです。しかし事業計画以上にサービスが抑制されたため、上記の様な多額の不用額が生じました。2008年度の決算が出ればその差は更に広がるものと思われます。

このため、県内の各保険者の2007年度の介護保険特別会計の基金積立金は、表⑤のようになっています。

2008年度の決算が出れば、基金残高が更に増えることは間違いありません。制度改悪されたこの3年間の介護保険事業の検証が何よりも求められています。


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3、 第5次「計画」を改善させる取り組みの重要性

県の計画のままだと保険あって介護なしという今の実態はますます深刻になるのではないでしょうか。そこで、第4期目を迎えて誰もが安心して利用でき働ける介護制度にしていくためには、日本共産党が2月9日に発表した「介護保険10年目を迎えるにあたっての提言」が実現されるよう、国に強く働きかけると共に福岡県として次のような取り組みが必要です。

1、低所得者対策の独自の取り組み

現在、県内28保険者中独自の保険料の軽減措置のある保険者は19で、利用料は9保険者となっています。保険料の軽減措置はどこも国が示した3原則(一般財政からの繰り入れだめ、全額減免だめ、資産審査なしの一律減免だめ)に沿ったものですが、各保険者間にバラツキがあります。より良いものに改善が必要ですが、基金積立金などを活用して「広域連合」など減免措置のないところでの取り組みが急がれています。

2、高齢者の実態に即した介護基盤整備を

介護型療養病床0計画にストップをかけ、高齢者が置かれている重度の自宅待機者の解消のため、低所得者でも入所できる特養施設などの整備が必要です。このためには、医療関係者や施設関係者、老人クラブの人々と共同して県や保険者、各自治体に対する要請行動を起こすことが重要です。

3、要介護認定の認定基準改悪に対する取り組み

厚労省の調査でも今回の認定制度の見直しにより、認定区分が低くなるケースがあると認めています。利用者の生活実態がきちんと反映できる調査となるよう、市町村の取り組みが重要になります。政府も、継続の人が低くなった場合、本人の希望により前のままでも良いなどと言っていますが、不服審査の請求などの権利行使も含めて身近な相談活動などが求められています。

4、国や自治体の責任で、保健・福祉・公衆衛生の抜本的強化を

今年の10月から福岡県は県内13ヶ所の保健福祉環境事務所を9ヶ所に縮小しようとしています。秋からの第2波の新型インフルエンザ流行が懸念されるなかで、反対の声をあげていくことは、喫緊の課題です。2005年の改悪で高齢者支援事業が介護保険の枠内に取り込まれ、介護予防のセンターとなる地域包括支援センターも財源は介護保険になっています。高齢者の生活支援や相談活動は、県と市町村の一般財源で運営するなど、保健・福祉・公衆衛生の抜本的強化が求められています。


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(補足資料)
この10年間で介護保険制度はどう変化し改悪されたか

介護保険制度について、この10年間の主な変化をあげると以下のようになる。

①第1号被保険者数(65歳以上)

2000年4月1日 852,110人 高齢化率17.4%

→2008年4月1日 1,058,328人 高齢化率20.9%


②要介護(要支援)認定者数(表⑥)

2000年4月 108,994人 認定率12.7%

→2008年3月末 194,065人 認定率17.7%


③サービス利用者数の推移

2000年4月 利用者 73,570人(利用率73.5%)

→2008年3月 利用者 159,970人(利用率82.1%)


④介護保険料(単純平均、月額)(表⑦)

2000年度(第1期)3,076円
最高:飯塚市 3,396円~最低:太宰府市 2,770円(1.2倍)

→2009年度(第4期)4,467円 第3期に対し2.6%減(発足時と比べ1.45倍に)
 最高:広域連合Aグループ 6,275円~最低:筑後市 3,600円(1.7倍)


⑤保険給付支給額(表⑧) 

2000年度 1,627億円

→2007年度 2,633億円 約1,000億円の増


⑥第1号被保険者1人あたりの支給月額

2000年度 17,159円

→2007年度 21,000円


⑦サービス利用者1人あたりの支給月額
 2000年度2007年度 
居宅サービス81,000円94,000円+13,000円
施設サービス322,000円264,000円▲58,000円
全体173,700円139,000円▲34,700円

⑧介護サービス事業所数

2000年4月 3,621

→2008年4月12,378 3.4倍に

①~⑧までが福岡県の介護保険が発足してから今日までの主な事業概要(福岡県介護保険年俸より)ですが、全国と同じくこの10年間で65歳以上の高齢者は約15万人増加し、高齢率20%と本県でも高齢化は急速に進んでいます。

要介護認定者も、表⑥のように、2005年までは右肩上がりに上昇し、介護サービスの利用者も居宅介護を中心に、発足時とくらべると倍以上に増えています。

しかし、発足時から今日に至るまで介護を必要とする高齢者の約2割の人々が、経済的理由などから介護サービスを利用していません。また、居宅サービスの平均利用率も全国平均と同じく、50%台にとどまっています。

こうした背景には重い利用料の負担があることは間違いありません。高齢者の所得状況などの生活実態について、県は把握しようとしませんが、介護保険料の所得段階別区分から推定すると、年収80万円までの高齢者が22.7%約23万人(全国平均は19%)もいます。住民税非課税世帯まで加えると35%(全国平均は30%)にのぼります。本県の高齢者の所得は、全国平均をかなり下回っていて、高齢者の深刻な生活実態がうかがわれます。

介護保険料は発足時、3,076円から3年ごとの改定で今回(2009年度4月1日)4,467円、1.45倍になりました。なかでも全国で最も高い広域連合のAグループは6,275円で、そこに住む高齢者は広域連合に独自の軽減措置がないため、わずかな年金から3,137円も天引きされています。


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