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政策と情報|日本共産党福岡県議団

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福岡県介護保険「広域連合」10年間の検証と課題について

2009年9月
日本共産党福岡県議団事務局 三浦 紀彦


福岡県介護保険広域連合が入る県自治会館(福岡市博多区千代町)参加が虫食い状態の福岡県介護保険広域連合加盟自治体

はじめに

福岡県介護保険「広域連合」(以下「広域連合」という)は、県下72市町村が参加する全国に例のない巨大「広域連合」人口110万人として発足した。介護保険がスタートして10年目を向えるが、この間、市町村合併などによる脱退があいつぎ、現在「広域連合」は、39市町村、人口80万人であるが、来年4月には八女市、前原市に周辺6町村が合併、脱退が承認されているので、33市町村になる(図①)。

「広域連合」は発足当初から、一つの県にも匹敵する巨大「広域連合」であることと、全国町村会長の山本文男氏が「広域連合」長であることなどから、全国的にも注目され、議会と自治体誌から二度にわたり、福岡県の「広域連合」に関する執筆の依頼を受けた。

その時指摘した「広域連合」の様々な問題点については、その後の経過と相次ぐ脱退で証明されたが、今日時点における「広域連合」の問題点や課題について、改めて見てみたい。

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一、メリット論の破綻とグループ別保険料の導入

「広域連合」は設立時、表①のような10項目のメリットをあげ、福岡県の「どこにも住もうと誰でも、同一水準の認定、給付、保険料で介護が平等に受けられる」とメリット論を展開し、保険料も全県平均より170円安い2908円でスタートとした。しかし「広域連合」のメリット論は、早くも第一期(2000年度~2002年度)で破綻し、一期目だけで43億円の財源不足(65才以上の被保険者の保険料の財源不足)が生じ、県の財政安定化基金から借入、二期目以降の保険料で返還するため、二期目の保険料は2908円から県下で一番高い35%アップの3940円と大幅値上げになった。併せて、旧産炭地地域の認定率の高さや、介護基盤サービスの極端な格差(例えば田川地区だけで特養施設は発足前に1200床整備)などから、高齢者一人当たりの介護給付費が一番高い福智町と一番低い県南の広川町とを比べると、二倍以上になるなど「広域連合」内の内部矛盾が顕在化、二期目の最後の2005年度から構成市町村を三つのグループに分ける「グループ別保険料」が導入された。当初かかげた「認定基準・給付・保険料の平等化で地域間格差が解消できる」としたメリット論は、完全に破綻した。


表1 広域連合設置理由としてあげられたメリット
  1. 認定基準、給付、保険料の平準化で地域間格差が解消できる。
  2. 認定審査会の委員に医師等の専門的な人材の確保ができる。
  3. 財政規模を大きくすることで、安定した保険財政が確保できる。
  4. 財源問題で国・県との対応がすすめやすい。
  5. 多様なサービス資源を確保し、利用することにより、住民ニーズに対応できる。
  6. サービス資源の整備について、個々の市町村で実施するより広域的な観点から、適切かつ円滑な調整ができる。
  7. 人的配置や電算機器等の運用コストの大幅な節約が図られる。
  8. 介護保険事業の円滑な運営のため、必要となる権限を国、県から受けることができ、また要請することができる。
  9. 介護保険事業のより民主的な運営ができる。
  10. 介護保険事業の実施に関連して市町村が行う事務に対し広域計画に基づいて勧告ができる。

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二、住民の要求、声が届かない「広域連合」の致命的欠陥

発足当初、「広域連合」議会は、各自治体から2名、144名で構成されていたが、2003年度に1名に半減され、定例議会は1月と7月の年2回しか開催されていない。議員は住民による直接選挙も保障されているが、全て間接選挙で選出されており、我党の議員は2名(田川市佐藤俊一議員、水巻町井手幸子議員)にすぎない。議会の審議は執行部の提案含めて2時間程度で、これまで我党を除いて発言者はなく、関係者からも承認を得るだけの機関になっていると指摘されてきた。「広域連合」傘下の高齢者の所得は全県平均以下でありながら、Aグループの保険料は6275円(四期目)と全国一高い。

現在、県内28保険者中19保険者で保険料の軽減措置が実施されているが、「広域連合」では未だに実施されていない。「広域連合」の初代事務局長であった藤崎誠一郎氏(厚生省からの天下り)が朝日新聞誌上で、「『広域連合』は介護保険本体のサービスをきちっとやり、各自治体は決められた基準以上のサービスの上乗せや、別の新しいメニューを加えないことで合意している」と述べた発足時の合意事項が未だに守られている。

我党議員の奮闘にもかかわらず、寄り合い世帯の「広域連合」が壁になり、住民の声や要求が届かないというのが「広域連合」の実態であり、最大の欠陥である。

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三、介護保険制度の05年の見直しによる抑制効果が最も上がっている「広域連合」

介護保険制度が発足してから5年目にあたる2005年に介護保険法が改悪された。主な改悪点は新予防給付の導入、施設介護やショートステイに「ホテルコスト」を導入、介護予防や高齢者福祉事業を介護保険事業の枠内で行うことなどである。この制度改悪による介護サービスの抑制により、介護給付費は大幅に圧縮された。全県的にも、第三期目の介護保険事業の実績が計画よりも下回る保険者が多数となったが、「広域連合」では最も顕著に06年度以降介護給付費が抑制されている(表②参照)。事業計画と決算額との差は、06年度~08年度の第三期で総額は、245億円を超える(表③参照)。


年次別介護保険給付費決算額(単位 千円)

広域連合の事業計画と決算額


このため、「広域連合」の第四期保険料は三期に比べ、初めて基準額(Bグループ)で266円下回る4700円(Aグループ6275円、Cグループ3862円)となった。県が調査した直近の特別養護老人ホームの申込者は、「広域連合」傘下の市町村で2123人にのぼっているが、三期目で整備された「広域連合」管内の特養施設は、柳川市を含む有明地域で60床、中間市、遠賀郡で50床にすぎない。第四期目も有明地区の40床、中間市、遠賀郡の80床のみで、低所得者が入所可能な特養施設の整備計画は、申込者の5%にすぎず、まさに保険あって介護なしの深刻な事態が進行している。

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四、広域連合の課題について

「広域連合」が発足時かかげたメリット論の大半は破綻した。グループ別保険料は第四期も継続され、一保険者一保険料という原則も、高齢者一人当たりの給付費の格差が縮まらないことから、第五期目も同一保険料は困難である。逆にメリットのないことからくる相次ぐ脱退(「広域連合」は合併時しか認めていない。)は、今後も後を絶たないであろう。

そもそも高齢化率、介護サービス基盤の極端な格差、生活環境、住民意識の違い、自治体の財政状況などから同一保険者となること自体に無理があり、市町村を保険者とする現行の制度ともなじまない。また、第三期より導入された身近なところで介護サービスを提供するという、地域密着型介護サービスの推進という方針とも矛盾する。

「広域連合」が、これまでの経過にとらわれず、市町村単独の保険者がいいのか、同一の地域特性を持っている市町村が生活圏域ごとに「連合」で行うのがいいのか、将来を見据えた議論が必要である。同時に、所得の低い高齢者が集中し高齢者の負担の限界を超えた、全国一高い保険料(Aグループ)を含む「広域連合」独自の軽減措置は、喫緊の課題である。

また、介護予防や保健・福祉の拠点となる地域包括支援センターが「広域連合」では支部単位に1ヶ所(田川支部だけ二ヶ所)しか設置されていない。少なくとも自治体ごとに設置し、本来の役割が果たせるよう、体制の充実が必要である。

とりわけ、認定率(65才以上の高齢者に占める要介護者)が突出して高い田川地区(28%)では、予防介護や保健事業を最重要課題に位置づけ、自治体あげての取り組みが求められている。旧産炭地の後遺症を今も引きずっているこうした地域は、財政力も弱いため、県の総合的支援が何よりも求められている。


発足後、脱退が続出した県介護保険広域連合

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