福岡県の同和行政の現状と課題
日本共産党福岡県議団事務局員 三浦 紀彦
1. はじめに
旧同和地区数が全国一多く、「地区数」も「同和関係者」も全国の一割を超え、歴代の部落解放同盟(以下解同)の委員長を出してきた福岡県は、文字通り解同の拠点として、福岡県政に対し、大きな影響力を発揮してきました。1969年に同和対策特別措置法が施行されて以来、法が失効するまでの33年間に市町村を含めると一兆円を超す同和対策事業が実施されてきました。福岡県は同和行政を県政の重要な課題と位置づけ、全ての部局にわたって同和対策事業に取り組み、法失効前の01年度までは、毎年100億円(同和加配教員の人件費を除く)を軽く超える予算を措置してきました。
党県議団は、運動団体である部落解放運動連合会(以下全解連)などとともに、同和対策事業の早期終結を強く県に求めてきました。
とりわけ、地域対策特別措置法が失効する03年度の予算議会(02年2月)で、瀬川議員が同和問題を取り上げ、国が同和対策事業を終了する三つの理由〔①これまで膨大な事業の実施によって同和地区の状況は大きく変化したこと、②特別対策を尚続けていくことは差別解消に必ずしも有効でないこと ③人口移動が激しい状況の中で同和地区・同和関係者に限定した施策を続けることは実務上困難であること〕を紹介、地域対策特別措置法の失効という転換期にあたり、県単独事業についても思い切った見直しが必要と知事に迫りました。これに対し知事は、「今後の同和対策等のあり方については総務省の方針や本県の実態等をも考慮しながら必要な検討もしてまいる」と答えました。
この知事答弁を受けて、県は見直しを行い、68あった同和対策事業の内、国庫補助事業は国の方針に従い整理(廃止)する、県単独事業については、ア、14年度以降は原則として廃止または一般対策に移行する イ、国庫補助事業の肩代わり事業は行なわない ウ、補助事業の場合、補助率は3分の2から2分の1へ改正する エ、事業実績、同和問題解決への有効性等の視点から見直しを行なうという基本方針を示し、特例措置を含めて22事業を継続事業とし、ハード事業は5年限りで終了するとしました。
2. 現段階における福岡県の同和行政の現状と課題について
08年度の県の同和対策関係当初予算は資料①のとおりです。継続事業として予算を計上しているのは建築都市部の4億3千万円余のみとなっています。
この予算の大半は住宅新築資金の貸付に関する市町村への助成事業等で、同和地区を対象とした下水道事業に3千百万円余が計上されています。この事業も県としての助成は11年度で終了することになっています。福岡県における住宅新築資金の滞納額は117億8千万円と全国ワースト1で償還率は88%、全国36府県中23位となっています。貸付事業は終了しましたが、返還期間が最長25年間なので、償還事業は21年(平成33年)までかかります。今県内の関係市町村の多くで債務者や保証人が死亡したり、破産や生保世帯になっていることなどにより、焦げ付き件数と金額が年々増えています。もともと国と県が推進してきた住宅新築事業についてはその償還についても国と県に責任があります。県は貸付金利と市町村の起債との金利差への県単独助成を始め、国の補助事業である償還事務費や焦げ付いた市町村の負担分に対し、国・県が3/4助成しています。こうした市町村への助成はむしろ拡充すべき対策といえます。
その他にも同和地区を対象とした中小企業高度化資金や中小企業安定資金の貸付等の返還事務があります。なかでも中小企業高度化資金については県議会で当局が公表した貸付状況によると、03年度までに貸付累計は24件の40億円余、貸付残高は17件24億円余でその内焦げ付いているのは16件17億円余となっています。焦げ付いた滞納額は債権回収会社に委託して回収に当たっていますが、回収不能により、最終的には県費で処理されることは間違いありません。一般の貸付事業と異なり、杜撰な審査で融資されたこれら多額の不良債権について県の責任が改めて問われています。
3. 一般事業に移行した人権啓発事業や、「隣保館運営事業」などの問題点と課題について
人権同和対策局の予算額は9億5千3百万円余(資料②)で、前年度比89.5%となっています。このうち市町村の設置している「隣保館」の運営費等の補助金(国1/2、県1/4、市町村1/4)に5億2千6百万円余、施設整備費等に七千百万円が計上され全予算の62%を占めています。
「隣保館」事業は地域対策特別措置法失効後、一般対策として全ての住民を対象に、地域の相談活動をはじめ、社会福祉、保健衛生に関する事業や文化活動等、様々な地域活動のコミュニテイセンターとして位置付けられています。県内には77箇所設置されていますが、国が定めた運営要綱に基づき活動しているところはまだ少数で、運動団体の事務所が施設の中にあったり、事実上管理運営を、解同に委託しているところがあるなど、実態は旧態依然の施設(隣保館)も少なくありません。
全額公費で運営されている一般対策にふさわしい施設運営が何よりも求められています。
啓発事業については財団法人、福岡県人権啓発情報センターの運営費に1億1千8百万円余、市町村が行なう啓発事業への助成として1億6千2百万円余が予算措置されています。その他にも、国が認知してきた運動団体が行なう啓発事業や研修などに対し、助成措置がなされていますが、事業内容や助成金額は公表されていません。運動団体によって異なりますが、実態は団体への補助金としての性格が強く、市町村が運動団体に助成している補助金の根拠にもなっています。
4. 福岡県の「同和」教育行政の現状と課題について
福岡県の同和教育行政は同和対策特別措置法施行以降、解同県連の「解放・同和教育」が県教委を通じて教育現場に持ち込まれた歴史でもありました。その実働部隊は県同教(福岡県同和教育研究協議会)や「地同教」で、多くの教員がヤミ専従として「県同教」や「地同教」に派遣され、現場の同和加配教員と一体になって、解放教育・部落排外主義教育を教育現場に押し付けてきました。福岡県における教育行政の最大の課題は一言でいえば解同に屈服した偏向教育の是正です。
2000年に始まった県同教違法派遣裁判・小西同和教育・ヤミ専従糾明裁判やこの裁判闘争に呼応して県議会で展開された同和教育を正す論戦などを通じて、県同教事務局への現職教師の派遣制度や同和加配教員制度の廃止など同和教育行政が一定見直されました。しかし、県下各地の教育現場では、児童生徒支援加配教員が同推教員となって教務時間中、各地の「地同教」の運営や行事に従事したりするなど旧態依然のところも少なくありません。
その他にも県立高校の50校に「同和教育推進」を目的に県単独の就学支援加配教員が配置されています。名目は全ての生徒の進路指導、生活・学力指導となっていますが、実態は高同教・県同教の行事や同和問題に関する会合のための出張に終始するなど同和偏重の活動になっているのが実態です。また、県教委は政令市を除き県単独事業として、204名の地域活動指導員を配置しています。指導員の大半は、教員OBで、地域の教育力の向上、子ども会の学習活動の指導や地域における生活体験活動、社会体験活動の指導などにあたるというものですが、地域によっては同和に偏重した活動になっています。
福岡県における同和教育行政は一般対策に移行し、同和関係予算としては計上されていませんが、上記のような様々な課題が残っています。しかしこれらの課題も、近日中に決着のつく「県同教裁判」(3月24日福岡高裁)をはじめ、県民の闘いによって必ず克服されることは間違いありません。解同の拠点といわれた福岡県でも巻き返しによる逆流が一時的にあったとしても、同和行政の終結に向けた大きな流れは誰も止めることはできません。
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