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福岡県医療費適正化計画の概要と問題点について
日本共産党福岡県議団事務局員 三浦 紀彦
06年に制定された「医療制度改革法」に基づき、医療費適正化計画の策定が都道府県に義務づけられた。これまで5年ごとに見直されてきた福岡県保健医療計画や福岡県健康増進計画も、今回は「医療費適正化計画」をより推進するという観点から策定されている。
福岡県に於ける第1期(平成20年度から平成24年度までの5年間)の医療費適正化計画の概要は資料(1)のとおりである。この計画によると、平成24年の医療費抑制効果を967億円と定め、この目標を達成するために生活習慣病の予防と平均在院日数を4.9日短縮(療養病床を現行の24,634床から15,550床にすることを含む)することを二大政策目標に掲げている。そして第1期の医療費抑制効果、967億円については、主に療養病床の転換・精神病院からの1,930人の退院や後発医薬品の普及・レセプト点検による重複受診や頻回受診の「適正化」などによって達成するとしている。第1期目については特定検診・特定保健指導による抑制効果が中長期を要するとして除外している。福岡県が策定した医療費適正化計画が県民の健康や暮らしにどういう影響をもたらそうとしているのか、その問題点を看てみよう。
1. 福岡県の老人医療費の現状についてのとらえ方について
福岡県の1人当たりの老人医療費は平成14年度以降ずっと全国1位で、平成17年度の1人当たりの医療費は1,019,650円、全国平均の1.24倍、長野県の1.5倍となっている。このことから、後期高齢者医療制度の保険料は全国一高い保険料となっており、年金からの天引きは貧困層の多い本県の高齢者の生活を直撃している。
福岡県は平成17年3月に「福岡県老人医療費問題に関する提言」を発表しているが、全国一高い要因として、①医療提供体制が充実していること、②循環器系の疾病で長期の入院を要する患者が多いこと、③高齢者の一人暮らしが多く社会的要因による長期入院患者が多いことなどを挙げており、今回の医療費適正化計画でも同様の分析を行っている。1人当たりの老人医療費が高くなっている要因を分析するにあたって、今後の福岡県民の健康対策を考えると、重要な二つの点が欠落している。
まず第一は、本県に於ける高齢層の貧困化の問題である。本県に於ける1人当たり老人医療費の地域差をみると、旧産炭地の田川保健所管内、大牟田保健所管内が高い。生活保護受給者の医療扶助費は老人医療費の中に含まれていないので、それを含めると医療費の地域格差は更に拡大する。本県に於ける高齢者の所得状況は、介護保険の保険料から見てみると、本人・世帯とも住民税非課税の高齢者(65歳以上)が44%を占め、後期高齢者医療制度の普通徴収者(月額15,000円以下の年金、介護保険料と合算して保険料の合計が年金額の1/2以上)が3割にも達する。病気と貧困の因果関係は定説となっているが、男性の平均寿命が最も短い自治体として田川郡大任町が全国ワースト2位(男性の平均寿命79歳、大任町74歳)となっている。健康にとって欠かせないバランスの取れた栄養ある食事や適度の運動と社会的活動に参加するためには、一定の生活水準が必要である。県の分析にはこの視点が欠落している。
第二は県・市町村に於ける保健行政や健康対策(予防医療、予防介護を含む)の取りくみの問題である。県内の保健師の総数は882名(資料(2)参照)で、人口当たりの保健師の数は長野県の1/2に過ぎない。栄養士の総数は81名だが、1人も配置していない町村が36もある。県の保健所はかつて21あったが、地域保健法による統廃合で13に激減している。保健師も165名から149名に減少している。市町村が老人保健法に基づき実施してきた基本健康診断の受診率は資料(3)のとおりであるが、市町村間のバラツキが大きく、本県の平均受診率は全国平均を下回っている。田川市に至っては11%という低さである。保健指導や健康対策の行政側の立ち遅れが1人当たりの老人医療費が高い要因となっているが、医療費適正化計画の中でもこの点は指摘されていない。
2. 療養病床の再編について
第1期目の医療費適正化計画で、医療費の抑制効果として最も重視しているのが療養病床の再編である。国は全国37万の療養病床を6割削減して15万床にするという数値目標を掲げた。ところが、東京都をはじめ多くの県が、実態に合っていないと国と異なる再編計画を立てたため、国は現在20万床に下方修正している。福岡県は平成18年10月1日現在の療養病床24,634床(医療病床17,574床、介護療養病床7,060床)を平成24年度までに15,550床にする計画を策定した。介護型療養病床を全廃した上で、医療型療養病床も2,000床あまり、新型の老健施設などに転換するとしている。この療養病床の再編問題については、真島県議が2月議会で取りあげ、民報の5月号に掲載しているので参照されたい。県はこの療養病床の削減に向けて、地域ケア体制整備構想を策定したが、療養病床からの具体的転換については平成20年度に医療機関から転換計画の調査を行い、第5次(H.21~H.23)福岡県高齢者保健福祉計画に反映するとしている。介護給付費の増大につながる療養病床の転換は、在宅などで特養施設に入所希望している2万人を超える要介護者の動向にも大きく影響する。
平成16年の調査で、県内16,000人を超える特養施設入所希望者がありながら、県は第4次(H.18~H.20)計画で、特養施設の増床をわずか833床にとどめた。
第5次計画では療養病床からの9,000人に及ぶ「転換」が介護給付費を増大させるとして、高齢者の実態に即した整備計画にならないことが危惧されている。平成20年度に策定される第5次の高齢者保健福祉計画は、医療費適正化計画、とりわけ療養病床の再編との関連で従来にも増して重要であり、医療難民・介護難民を出さない計画案を策定することが何よりも求められている。
3. 特定検診・特定保健指導の推進について
国の方針に基づき県の第1期目の計画として、検診の実施率の目標を70%以上、保健指導の実施率を45%以上、メタボリック症候群の該当者の減少率を10%以上という目標を定めた。医療費の3割を占める生活習慣病の減少は医療費抑制につながるとして、各保険者に検診と保健指導を義務づけ、達成しない保険者には後期高齢者医療制度への支援金を加算するというペナルティまで課している。最も困難をかかえる国保の保険者である市町村が上記の目標を達成することは、容易なことではない。市町村の保健師、栄養士の配置状況からすると本県に於ける保健指導は、このままだと民間の保健事業者に委託される可能性が大である。これまで保健事業は、県や市町村の責任で実施されてきたが、民間委託となれば保健サービスが有料になることなどが懸念され、貧富の格差が健康格差につながりかねない。県と市町村が自治体本来の使命である、県民の健康と福祉を保持するため、従来から行ってきた基本検診を更に充実させるとともに、保健体制を整備して、住民に等しく、無償で保健サービスを実施してこそはじめて生活習慣病の予防につながる。
今回の医療制度改革は、県に権限を集中させ、医療費を抑制するという役割を県に負わせようとしているが、今回策定された福岡県医療費適正化計画は、国の方針にそって計画されているだけでなく、麻生知事が定例の記者会見で“県の最大の課題は後期高齢者医療制度に対する県独自の支援(財政的支援)でなく、医療費の抑制である”と言い切っているように、知事の強い意向を受けて策定されている。県民の生命と健康を守る闘いは文字通り、県政を主戦場として展開されていくに違いない。
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